Present【 for Grandmothers】
On December 24, 2005, five years had passed since Imazu had secretly continued his "consolatory performances at nursing homes.
He prepared a big surprise for the grandmothers and grandfathers.
On Christmas Eve, Imazu sent them a CD of Christmas songs that he had recorded for them to enjoy Christmas cheerfully at their homes.The elderly who gathered on Christmas Eve were intoxicated by the bright and happy melodies, enjoyed dancing, and were filled with laughter on this exciting night.
On the following day, the 25th, "happiness" echoed in the hearts of many elderly people.
It cannot be a coincidence that this "Christmas Song CD" was found 18 years later, in a time when people were exhausted from Corona. I hope that the heart-thumping sound will once again echo through the hearts of many people.
【 Christmas for Grandma! ／ おばあちゃんたちへのプレゼント】に寄せて
...
今津雅仁が「デイケアセンター慰問演奏」のソロ活動を続けていたことを知る人はいない。


マスコミは勿論のことジャズファン達にも情報が届かなかったのには理由がある。

2000年から始めたこのソロ活動には今津自身の深い思い入れがあり、『自分の演奏を聴いたことのない老人たちの心に響く喜びを共有したい』という一途な思いが強く、一時期ジャズ界を離れていた今津が音楽と真剣に対峙していた頃と重なる。


密かに続けていた「デイケアセンター慰問演奏」も５年が過ぎた2005年12月24日。


今津がおばあちゃんおじいちゃん達にプレゼントした大きなサプライズ。


施設でのクリスマスを賑やかに楽しんでもらう為にレコーディングした「クリスマス・ソングCD」をイブの日にホームに送ったのだ。

クリスマスイブに集まった老人たちは明るくハッピーなメロディに酔いしれ、ダンスを楽しみ、心躍る一夜に笑いが満ち溢れた。

おばあちゃんたちの声掛けで翌25日には朝早くから多くの年老いた人たちが施設に詰めかけてしまい、職員も急遽総出する羽目となったという「心温まる笑い話」も残っているそうだ。

「for Grandma!／おばあちゃんたちへ」をレコーディングした今津のおばあちゃんたちへの想いは見事なまでに伝わったということだろう。

驚くことべきなのは、このCD制作は今津が思い付いた日から「選曲、アレンジ、リハーサル、レコーディング」とCD完成までたったの７日間で仕上ていることだ。


それにも増して、抜群の音質の良さが光っている。
それというのも、録音エンジニアには「日本のルディ・ヴァン・ゲルダー」と誰もが認めるジャズ録音の第一人者である神成芳彦氏が携わり、神成氏の「雷電スタジオ」でレコーディングされたからだ。

「神成録音は神の音！」と呼ばれる通り、今津のテナーの持つきめ細やかさと豪快な野太いサウンドが遺憾なく収録されている。

『自分自身、こんなに自然な演奏が出来ていたなんて今でも信じられないです。』

しかし、この音源の存在を録音に参加したメンバーも今津自身すらもすっかり忘れていたらしい。

『こんな素晴らしい音源が残っていたなんて思ってもおりませんでした。これも私の人生を立て直してくれた福島稔先生のおかげです！』

福島稔先生とは 1999年の大事故で再起不能を言い渡された今津を那須に移住させ、７年の歳月をかけて現役復帰に尽力した主治医である。


『今津のテナーに魅了されたジャズファンのためにも…』という福島医師が今回のアルバムにドラマーとして今津のテナーに寄り添う姿が目に浮かぶ。


1989年に発表された「MASATO」の劇的な売上げを果たすと同時に今津雅仁のオリジナル曲がテレビ、ラジオで頻繁に使用されるという一種の社会現象となり、それまで日本人ジャズミュージシャンに閉鎖的だったメジャーカンパニーが一転して才能ある日本の音楽家たちにレコーディングの機会を与える道を開いた。



今津雅仁という存在は日本ジャズ界の歴史に大転換を与えたパイオニアと言えよう。

現在の日本のジャズ・シーンには今津が切り開いたものが大きく影響している。




しかし、1995年の阪神淡路大震災で母を亡くし大きな精神的ショックを受けた今津は心の安らぐ間もなく、追突事故の被害を受けた彼には第一線から遠ざかるしか選ぶ道など残されていなかった。


「奇跡の復活」と呼ばれたカムバックを果たすまでに費やした身を砕くほどの努力は我々には想像すら出来ない。

それほどまでに音楽を愛し、また執着する今津のエネルギーには計り知れないものがある。



そんな悲運の連続だった今津雅仁が何故また「デイケアセンター慰問演奏」を続けていたのだろうか。



それについての話も聞いてみたいものだが、何はともあれ今津の発掘された「愛と優しさに満ち溢れた音」に耳を傾けたい。

コロナで疲れきった時代に、この「クリスマス・ソングCD」が18年の時を経て見つかったこと。 



そして、改めて今津が自ら神成芳彦氏という不世出の録音エンジニアに敬意を表す姿にも心洗われる。


私には偶然とは思えない明るい未来を感じるのだが。

再び多くの人たちに心ときめくサウンドが響いて行くことを願っている。




ジャズ評論家　小川隆夫
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今津雅仁：ts
近藤哥久子：p
青柳能明：b
福島　稔：dr

Special Thanks／神成芳彦

Special Thanks／八木知明